それは2014年6月のこと。この年の夏休み旅行は南ドイツのベルヒテスガーデン。もうすぐ休みだ~とワクワク。そんなとき何かの拍子に「バイエルン、ベルヒテスガーデナーランドの洞窟で、洞窟研究者が事故にあい大怪我をした」とニュースを聞きました。事故があったのはベルヒテスガーデンの北、オーストリアとの国境にまたがる石灰岩の山、ウンタースベルクUntersbergです。
ウンタースベルクの中でも最長最大の洞窟リーゼンディングRiesending(直訳:どでかいもの)の中でした。3人のパーティーで洞窟探検の途中、そのうちの1人、洞窟探検の第一人者ヨハン・ヴェストハウザーさんが、落石の直撃を頭に受け脳と頭蓋骨に大怪我をし、動けなくなってしまったんだそうです。
洞窟探検の二日目に、入り口から6.5キロメートル行ったところ、上の図で右下部Biwak5とbiwak6の間で起こった事故とのこと。1人がヴェストハウザーさんに付き添っている間、もう1人が出口まで12時間(!)かけて助けを呼びに戻り、その後は壮大な救助プロジェクトが始まりました。ヨーロッパ中から200名以上の洞窟研究者・探検家が、手弁当で救助に駆け付けたそうです。そのほかの医療関係者や救助関係者も合わせると、携わった人は700人以上。何せ、洞窟内の険しく狭く複雑に入り組んだ山あり谷あり、垂直トンネルあり地底湖ありの困難なルートをとおって、担架に横たわったヴェストハウザーさんを救出するのです。
実際に救出活動が始まったのが事故が起こってから5日後の6月13日。それから6日後、ヴェストハウザーさんは無事洞窟から救出され、待機していたヘリコプターで病院に運ばれました。私もその間、救助の様子が気になり、毎晩ドイツのウェブニュースで救助活動についての動画を見ていました。ヴェストハウザーさんが洞窟から助け出された時の映像には胸が熱くなりました。
私たちがベルヒテスガーデンに夏休み行った際、泊まったアパートのベランダからこのウンタースベルクを見ることができました。主に石灰岩からなるウンタースベルク。数多くの洞窟がその中にあり、そのためか、なぞに満ちた山としていくつもの伝説に彩られており、古くから畏怖の対象になっていたそうです。
上の方は石灰岩の山肌が露出して白く見えますが、雨が降ってくると水がしみ込んだ山肌が上のほうからだんだん灰色そして黒っぽく色が変わっていき、雰囲気もちょっと怖げに変わります。伝説が生まれたというのにも頷けます。
そんなウンタースベルクでは、トレッキングやハイキング、ロッククライミングなどを楽しめるほか、峡谷を散策したり氷の洞窟を訪ねたりすることもできるそうです。次回ベルヒテスガーデン地方に行く機会があれば、ウンタースベルクもいろいろ体験してみたいものです。
読んでくださってどうもありがとうございました。